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​   酒縁さらしな日本酒会

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「アル添酒を楽しむ会」​

2024.5.23 Thu

​参考資料

1.醸造アルコールとは

原料:サトウキビ由来の糖蜜から作られた蒸留酒(甲類焼酎と同様の製法)

純粋なエチルアルコールに近い

缶チューハイのベースになっているアルコールと同じもの

​化学的に精製(合成)されたものではない

醸造アルコールはサトウキビを原料とした糖蜜から作られた蒸留酒(甲類焼酎と同様の製法)で純粋なエチルアルコールに近いものです。

缶チューハイのベースになっているアルコールと同じもの、と理解していただくのが分かりやすいと思います。

一部の酒蔵では、自家製造した米焼酎をアルコール添加に用いているところもあるようです。また、国産米を原料にした醸造アルコールを販売するメーカーもあります。認められている添加量は、

なお化学的に精製(合成)されたものをイメージされる方もいるようですが、これは誤りです。


2.アル添の濃度と添加タイミング

醸造アルコールは、精製されたときのアルコール度数が95%で、酒造メーカーに入荷した後は60%程度に希釈されてから保存されます。これは95%という高いアルコール濃度のままだと、消防法上「危険物」にあたるためです。

そしていよいよ添加というタイミングで、醸造アルコールはさらに希釈され、アルコール度数30%程度になります。

お酒を搾ることを上槽といいますが、基本的な添加タイミングはこの上槽の直前つまりもろみの末期です。

これは、酒税法上の「清酒(日本酒)」の定義とも関係しています。

酒税法では、搾る前にアルコールを添加した場合のみ「清酒(日本酒)」として認められていまして、搾ったあとにアルコールを添加したものは「リキュール」になってしまうのです。


3.アル添の目的

  • 腐敗を防ぎ保存性を高める

  • 香りが立ちやすくする

  • キレをよくする

  • コスト削減

現代の酒造りにおいて、醸造アルコールの添加は主に香味調整のために行われます。醸造アルコールには、アルコール由来の香味以外の要素はほぼないため、味わいをより軽快にします。また、アルコールの刺激が加わるため、キリッとした味わいがより感じられるようになります。

また、吟醸酒特有の吟醸香を高める効果もあります。

アルコールには高い浸透作用があります。アルコールを染みこませたガーゼで肌を拭くと汚れがとれやすいという経験をした方があると思いますが、アルコールはその優れた浸透作用で一度皮膚の組織の中に入り込み、出ていくときに一緒に汚れを外に持ち出す働きをします。これと同じことで、しぼる前のもろみに添加されたアルコールは米の組織の中(特に麹米)に入り込み米の中に隠れている香りを外に引っ張り出す力があります。つまり、純米だと搾る時に酒の方に来ず、そのまま粕の方に残って行ってしまう香りをアル添は引き出す力があります。

現代のアル添技術が持つ価値は、全国新酒鑑評会の結果にも現れています。アル添酒の入賞率が50%以上であるのに対し、純米酒の入賞率は平成30(2018)酒造年度まで10%程度。令和に入って(2019酒造年度)以降の鑑評会では純米酒の入賞率も30%以上に向上しているものの、吟醸酒として華やかな香りとキレの良さを併せ持つアル添の特徴が、依然として高く評価されていることがわかります。

つまり造り手は、自分たちの理想の酒を実現するために、醸造アルコール添加というひと手間を加えているわけです。

かつて、低価格な清酒を製造するために、醸造アルコールの添加を行うことで酒の量を増加させ、製造コストの軽減を図る場合もありました。がこれは現代においてはほぼないといっていいかもしれません。

4.アル添の歴史

江戸時代初期の書物・童蒙酒造記にこういった記載があります。

「焼酎を少し取り、上槽の五日から三日前に、一割ほど醪(もろみ)の中に加える。こうすると酒の風味がしゃんとし、日持ちが良くなる。」

当時は現在のような醸造アルコールではなく、もろみや酒粕から造られた焼酎が添加されていました。これによって味がしまってキレがよくなると同時に、保存性が高まることが知られていたのです。このように焼酎を添加する方法は、「柱焼酎」と呼ばれます。

その後、第二次世界大戦前後になると、江戸時代から続く「柱焼酎」とはまったく別のアル添酒が登場します。通常の酒造りで生成されるアルコールの2倍もの醸造アルコールを添加し、最終的に3倍の量の酒を造るこの方法は、「三増酒(三倍増醸酒)」と呼ばれました。

三増酒は、戦間期の米不足・酒不足を背景として生まれました。しかし戦後は、単に酒造りのコストを抑えるために三増酒が製造されていた側面があります。そういった三増酒の中には、質の悪い酒も少なくありませんでした。

上記のような流れを経て、先に述べたように、現代におけるアルコール添加のあり方にたどりつきました。

日本が戦間期を迎えると三増酒(三倍増醸酒)が生まれました。

この手法は米が不足していた時代に生み出されたもので、醪に醸造アルコールを加えて、さらに糖類や酸味料で香味を調整したものです。

この工程を行うことで酒の量を約3倍に増やすことができたため、その名前が付けられました。

現在では、アルコールの添加量に関する規制も設けられています。数回にわたる酒税法改正を経て、2006年には、「三増酒」が造れないようになりました。 改正法では三増酒は清酒とみなされないようになったためです。具体的には、糖類などほかの副原料を含めて、添加物の合計重量が白米使用量の50%以下に制限されることとなりました。実際にはこれほど多くの副原料が使われることはありませんが、この規制は酒の品質保持に一役買っていると言えます。


4.醸造アルコールが悪者扱いされる理由

「醸造アルコールは悪酔いする」などの理由で、アル添の日本酒を避ける人がいます。このような「醸造アルコール=体に悪いもの」というイメージは、かつての三増酒から来ていると考えられます。コストダウンだけを目的に造られていた三増酒の中には、たしかに悪酔いをもたらす低品質の酒もあったかもしれません。そうしたネガティブなイメージが、『美味しんぼ』(雁屋哲作)などの創作物を通して助長されてきたという側面もあります。

しかし今日では、醸造アルコールはアルコール量を増やす目的で使われることはあまり多くありません。「大吟醸」「吟醸」「本醸造」といった特定名称酒においては、増量目的で使われることは皆無で、さきほど解説したように、むしろ香りや味わいを改善しよりよい酒質を作るために醸造アルコールが使われています。

そもそも実際には、醸造アルコールは米の発酵で生成するアルコールと同じエタノール。例えば、チューハイにも使われているものです。現代では品質検査も厳しく行われていて、醸造アルコールを加えただけで体に悪影響が出るような日本酒になることはないと考えてよいでしょう。


5.醸造アルコールと特定名称

特定名称酒の場合は白米重量の10%(アルコール濃度95%換算)までです。


6.普通酒とは

「普通」と言いながら、店頭にたくさん並んでいる日本酒のなかに「普通酒」と書いてあるお酒はありません。日本酒は、基本的に特定名称酒と普通酒に分けられ、特定名称酒に分類されない日本酒のことを指します。

「一般酒」と表記される場合もある

私たちが普段よくスーパーで目にする紙パックのお酒や、居酒屋などでメニューに「日本酒」とだけ書かれているお酒は、ほとんどが普通酒でしょう。普通酒は私たちが思っている以上に私たちの生活に浸透しています。具体的には、以下のようなお酒が普通酒として扱われています。

  • 醸造用のアルコール添加があり、精米歩合が70%超のもの

  • 本醸造の規定量以上のアルコールを添加したもの

  • 糖類や酸味料などを原料に使用したもの

  • 等外の米を使用したもの

特定名称酒が日本酒の生産量のなかで占める割合は年々高くなっています。しかしそれでも普通酒は消費量全体の約7割を占め、手に入りやすいお酒として多くのお酒好きの人たちから愛されています

特定名称酒は手間と時間をかけて造られたお酒というイメージがあり、普通酒は安価であまりおいしくないと思われがちです。しかし、普通酒のなかにも、おいしく楽しんで飲めるよう丁寧に造られた日本酒は数多く販売されています。日本酒を選ぶときに普通酒を選択肢に加えると、楽しみの幅が広がるでしょう。

参考文献

清酒の製法品質表示基準
 

日本酒の「表示義務のない添加物」ってなに? - 米、米麹、水「以外」の原料・資材を学ぶ
 

アル添は悪?日本酒の「醸造アルコール」を正しく理解しよう

 

普通酒ってどんな日本酒? - 特別なお酒ではないからこその楽しみ方とは

蔵元日記vol.017【 アル添吟醸?純米吟醸 】

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